濁りの誘惑:New England IPA

年の初めにコラム的なものを書いてみようかと思い、インターネットサーフィンした結果をまとめてみました。間違いなく2017年の中心となるであろうトピックとして選んだのは、そう、ニューイングランドスタイルIPAです。




始めに
一見すると、ヴァイツェンかと思うほどの濁りがある外観が特徴のスタイル。別名、 NE IPA、Vermont IPA、New England Style IPAなどとも称されます。2016年初頭から米国で最も流行っているスタイルの一つです。残念ながら、正規の流通では、まだ日本では買えないようです。残念ながら、私自身は、小さな日本のブルワリーが作ったものしか、まだ楽しめてなくて、これらのビールが本当にNew England Style IPA なのかも分からない状況です。こんな話題沸騰の新たなカテゴリーに興味が湧いて少しまとめておこうかと思います。

ことの始まり
やはりというか米国からです。少し風合いが違うのがNew Englandからというところが凄く興味を惹かれます。New Englandって、何となく保守的なイメージがあったので。。。そんな保守的な地域でも、イノベイティブな方は、居るもので、IPAと言えば、UKなスタイルより西海岸的な柑橘の香りと強力なビタネスの組み合わせをという固定概念を覆すビールを造りだしました。New England IPAで、有名なブルワリーは、

Alchemist Brewery(バーモント州)

Fiddlehead Brewing(バーモント州)

Hill Farmstead Brewing(バーモント州)

Other Half Brewing(ニューヨーク州)

Tree House Brewing(マサチューセッツ州)

Trillium Brewing(マサチューセッツ州)

Maine Beer Company(メイン州)

Odd13 Brewing(コロラド州)

などです。

Odd13 Brewingはコロラド州ですが、これ以外はNew Englandにあります。また、極めて人気が高く、初めてこのスタイルのIPAを醸造したと言われているAlchemist Breweryなどはバーモント州にあることから、New England IPAではなく、Vermont IPAと称するべきという意見もあるそうです。
その内、米国に行くことがあれば、是非本場のNew England IPAを試してみたいと思います。

※2017年10月更新(始まり)
こちらの記事、結構人気があるので、ビックリです。やはり、Hazy IPAは人気があるんだなぁと実感しました。自分達の満足のために始めたブログですが、多くの人に読んでもらえるのは単純に凄く嬉しいです。そこで、以下に今までにブログでレビューを残したHazy IPAをまとめてみました。これ以外のHazy IPAも、当然飲んではいるのですが、レビューを残せていないのが多々ありまして。。。。ちなみに、自分的感覚では、日本のブリュワリーのHazy IPAは、西海岸的なビタネスを含んで意識的に醸造しているのかなぁと思っています。ウルケルのお勧めは、Anchor Brewing初のHazy IPAStillWater ArtisanalのHazy IPAです。

Two Kilts Brewing “IPA”
Shigakogen Beer “New ENGI-LAND IPA”
 Revival Brewing Co.“You Thristy?”
Shigakogen Beer “NEW ENGI-LAND IPA” 1st and 2nd
StillWater Artisanal “MAINSTREAM POP SONG”
Local Brewing Company “Murkules New England Style Double IPA”
Local Brewing Company “Anchored at Local”
※2017年10月更新(終わり)

特徴
外観は、何と言っても濁りです。Hazyと呼ばれています。ヴァイツェンなどと同じくらい又はそれ以上の濁りが特徴だそうです。
香りは、ホップのアロマが強烈に効いていて、柑橘やトロピカルフルーツの香りが印象的だそうです。
飲んでみると、舌触りが凄く滑らかでクリーミーなどの表現が用いられます。これは、外観のHazyも影響しているかと。IPAは、通常苦いのですが、NE IPAはあまり苦さは無く、大量のホップはビタネスではなく、アロマのために用いられます。NE IPAでは、通常のIPAの4倍以上のホップが使われるそうです。ビタネスに使われるホップとアロマに使われるホップの比率は1:10というブルワリーもあるそうです。ホップは沢山使っているけど、ビタネスが弱いという、今までのIPAの固定概念を覆すビールです。

醸造プロセス
ブルワー達が悩んでいる部分は、NE IPAの特徴である濁りと口当たりのスムーズさをどのように再現するかについてのようです。

いくつか手段があるようですが、以下のものが主なものです。

    • セカンダリモルト、副原料
      小麦(ウィート)を使う。ウィートを使うヴァイツェンなどで知られているようにウィート系のビールは、濁りがあるものが多いです。ウィートは、大麦(バーレイ)よりもタンパク質を多く含んでいます。このタンパク質が低温時にビールに含まれているポリフェノールと結びつくと濁りが発生します。
      また、オート麦を使い、口当たりの滑らかさを生じさせているブルワリーもあるそうです。スタウトやインペリアルスタウトで良く用いられる手法です。
      ちなみに、カルト的な人気を誇るAlchemist Breweryでは、ウィートもオート麦も使わないそうです。
    • イースト
      UK由来のイーストを使う。UKイーストは、USのイーストよりも凝縮性が低いので、UKイーストで発酵したビールでは、イーストが沈殿せず、ビール中に漂うので、より濁ったビールとなります。ちなみに、UKイーストは、エステル香があるので、ビール完成時のフルーティで華やかな香りにも効果的なようです。
    • ドライホップの投入タイミング
      ドライホップ(ビールの元であるウォートにホップを直接投入する手法)のタイミングを一次発酵時に投入するそうです。一次発酵時にドライホップを行うのは、ある意味タブーだそうです。というのもホップに付着している野生酵母や乳酸菌の影響によりサワービールになる可能性があるからです。でも、一次発酵では、イーストの活動が盛んで、この時、ウォート内には対流が発生します。その対流によって、ホップがウォートに混ざることにより、ビールに濁りをもたらすことができます。また、ドライホップする際に、ホップを取り除き易くするために、バッグに入れて投入することもあるそうですが、NE IPAでは、ホップをバッグに入れることなく、そのまま投入することもあるそうです。ちなみに、一次発酵の対流の凄まじさは、運が良ければ、キリンビールが代官山で運営しているSpring Valley Breweryにある有名なガラスタンクで見ることができます。
    • 石膏
      New Englandの水が、濁りに効果的なようです。PHが低い方が濁りに影響があるそうで、日本のブルワリーでも行われているように、水質調整のためにビールの元に石膏を投入するようです。

まとめ
色々と書いてみましたが、2017年1月現在、ウルケルは、まだ、本物のNE IPAを飲んだことがありません。今後、西海岸系ブルワリーや、ポートランド系ブルワリーがNEスタイル IPAをリリースすることでしょう。是非、日本のブルワリーにも頑張ってもらって、NEスタイル IPAをリリースして欲しいです。その前に、本流とされるNew England IPAを飲んでみたいかも。でも、NEスタイル IPAがNew England IPAと同じ味である必要はないかぁ、NEスタイル と呼ばれるIPAが美味しければ。所詮、カテゴリやスタイルは取り決めですもんね。自分が美味しく感じるのが一番大事ということで。

 

ウルケル田中


濁りの誘惑:New England IPA

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